これがきっと、スタートライン(1)

――――― レイリンが、影丸に念願の弟子入りを果たした直後の話。


相変わらず、オトモアイルーのコウジンは、どんぐり装備でむすっとしていた。「あんな奴止めといた方が良いニャ」「暴力振るに決まってるニャ」と言っていたが、レイリン自身は天にも舞い上がる思いであった。ユクモ村長のはからいによって住まわせてもらうこととなった一軒屋で、レイリンは笑みを浮かべたまま自らの装備品を手入れする。
かれこれ数ヶ月……いや下手したら半年、もっとそれ以上の時間を費やしたのだ。ついに、レイリンが願い続けたことが現実となり、これを喜ばずしてどうする。
という具合にレイリンはさっきから鼻歌混じりで、コウジンなどついには半眼である。

しかし、彼女は本当に嬉しかった。
新米の新米、駆け出しハンターのレイリンが、願い続けたこと。それは、彼女にとって大きな意味があるのだ。
とある狩猟クエストでドスファンゴに挑んだ、あの日。追い掛け回され牙を振り回され、死ぬかもしれないと半泣きでコウジンとともに渓流を逃げ回っていた時。
採集にやって来たという、あのハンターに出会った。

「……さっきから、死にそうな悲鳴出してたのはお前か」

何回目になるか分からない転倒で、あちこち走る痛みによって起き上がれずにいた彼女の頭上で、低い男性の声が聞こえた。
おもむろに顔をあげると、見知らぬハンターが背後に佇んでいた。顔を覆う頭防具のせいで表情など見えやしないが、唯一見える瞳は鋭く眼光を放っていた。
張り詰めるまでの冷静さと、狩場ゆえか独特の気迫をまとったそのハンターは、全身を暗色の装備一式で固めていた。後に知ることになったが、迅竜と呼ばれる飛竜種《ナルガクルガ》の素材から作られる、上位防具であるらしいが、この時のレイリンにそれが判別出来るわけもなく、ただただその自分とは異なる空気に息を飲んだ。
そういえば、ユクモ村にはすでに専属ハンターが居ると村長から聞き、何度も挨拶に行ったが常にクエストに出かけ会えずじまいだったが、もしかしてこの人だろうか。
なんて呆けていると、そのハンターはゆっくりと歩み寄り、座り込んだままのレイリンには目もくれずその前へと立つ。

「泣いている暇があれば、早く立て。ここは狩場だ、この瞬間も後ろからジャギィが来る可能性だってある」

厳しい、というよりも感情みのない声音が印象だった。
しかしその数秒後、レイリンが散々苦しまされたドスファンゴは横たわっていた。
その鮮やかな太刀使いの光景に、レイリンは思ったのだ。この人からその技術を学びたい、と。

かくして、今日は夢が現実になり、記念日にもなりそうなほど浮かれていた。

ユクモ村の専属ハンターであり先輩であり、かつて村を脅威にさらした《ジンオウガ》を討伐したもの……影丸。
変わった名前だが、東国の出身だろうか。
ともかくそんな人に弟子入り出来るなんて、自分はなんて恵まれているのだろう。
ただ、少しだけ気がかりなのは、その時のことを村人らに尋ねると、皆渋って話そうとしないのだ。村を救ったのだから、武勇伝のように語ってくれるかと思ったのだけれど……何かあったのだろうか。
まあ、それはおいおい知ることになるだろうと、レイリンはあまり深くは考えなかった。というのも、明日はその影丸とクエストに出ることとなったのだ。ついつい、明日のために夜手入れをしているというわけだった。

「またあの姿を見れるなんて、ラッキーね。本当に」
「……あんまり信用ならないニャ、あんな奴」

そうして、横から水を差すコウジン。レイリンは眉をひそめ、「どうしてそんなに言うの」とやや語尾を強くし聞く。コウジンは腕を組むと、「危ないニャ、アイツの経歴を旦那様見たニャ?」と逆に尋ねてきた。
気勢を削がれたものの、「知らないけど、師匠になる人なんだから」と諌める。しかしコウジンは一層鼻息を荒くした。

「旦那様が村に来てから、一度も会ってなかったニャ。だってアイツ、ほぼ毎日討伐クエストばっかりしてたらしいニャ」
「別に、ハンターなんだからそれくらい……」
「旦那様、甘いニャ。アイツが相手にしてるのは、旦那様も会ったことないような凶暴な奴らばっかりニャ。そんなのを毎日、毎日続けてたらしいニャ。
普通死ぬニャ、過労死するニャ、命を捨てるようなものニャ!」

……まあつまり彼が言いたいことは。
危険極まりないクエストにばかり行く男についていけば、今度はレイリンが危険にさらされる、ということだろう。
幾らなんでもそれは、と思ったが、影丸ことをよく知らないし、確かに彼は常に血の匂いを纏わせているような空気をしている。
狩猟クエストは一般的に、2日3日掛かることは珍しくない。したがって、その分休養も十分に取らなければならないのだが……それを、ほぼ、毎日。しかもレイリンが会いに行くたびに出払っていた時はクエストに出ていて、頼み込んでいた時は帰ってきた時だった。今思えば、確かに彼のハンター生活はまるで自身を追い込み痛みつけているようなものだ。
今さらながら気付き、そして否定しきれない自分に、身震いした。

「だ……大丈夫よね……?」
「ほら見ろニャ、不安ニャ! だったら今のうちにやっぱり止めたって言うニャ!」
「それは駄目!」

半年近くも、弟子入りを願い、一刀両断で断られてきた。それが、数日前に急に受け入れてくれたのだ。気まぐれでも構わない、これを逃せばもう機会は得られない。
レイリンの力のこもった声に、コウジンは一瞬たじろいだ。「何でそんニャにアイツが良いのニャ……?」
……そう聞かれても、コウジンを納得させられる返答は、出来そうにない。直感で、あの人のもとでハンターの腕を上げたい、そう思っただけだから。

『俺は弟子なんてもの取るつもりはない。良い師になりそうな奴は多くいるんだ、他を当たってくれ』

……あの時、影丸が冷たく言い放ちながらも、その目を寂しそうに細めていたのは。
彼が頑なに独りでいることを望む理由に、繋がるのだろうか。

「……ていうか、コウジンが嫌いなのってむしろあの人のオトモのヒゲツさんでしょ」
「ソイツの名前言うのは無しニャ、旦那様!!」

頭を掻き毟る彼は、奇声をあげる。どうもこの子は、影丸のオトモアイルーをいたく気に入らないらしく、影丸の農場へ挨拶をしに行った時も酷い喧嘩腰だった。まあ結局、レイリンから見てもこてんぱんに伸されていたけれど。
それも相まって、コウジンのヒゲツへの対抗心も並大抵でない。彼がこんな風に言うのも、むしろそれが原因じゃなかろうか。

「とにかく、明日は初日なんだから、失礼のないようにしなくちゃ」

嫌そうなコウジンの声は無視し、レイリンは防具の手入れを終わらす。その時、トントンッと控えめな戸を叩く音が聞こえた。パッと後ろを振り返ると、入り口に小さな影が佇んでいる。ユクモ村は扉のない建築様式のため、少し長めな暖簾が下がっているが、そこから覗く足はどう見ても人間ではない。真っ黒な、獣の足だ。
「どうぞー?」レイリンは声をかけながら、入り口へと向かう。それと同時に、パサリと暖簾が上がり、その向こうに佇んでいた小さな影が明らかになる。

「夜分失礼するニャ、レイリンさん」

ジンオウSネコ装備を一式まとった、漆黒のメラルーだった。やや低く、落ち着いた言葉遣いのそれを聞いたらしいコウジンが、瞬間的に立ち上がり薪を一本握り締め振りかぶった。それを何の雑作もなくかわし、メラルーはレイリンを見上げて言う。

「明日のことで、お話があるニャ」
「う、うん、あの……ごめんなさい、ヒゲツさん。コウジンがまた……」
「気にしてないニャ、あれくらいは攻撃のうちには入らないニャ」

隠密色のメラルー……ヒゲツは、ふっと息を吐く。その後ろでは、勢いよく転がっていったコウジンの悲鳴が聞こえる。大方、家の前の石垣にでもぶつかったのだろう。

「えと、それで、明日のことと言うのは……?」
「―――― 特に何も用意はしなくていい、それだけ伝えに来た」

ヒゲツの声、ではなかった。もっと低い、男性の声だ。レイリンは思わず肩を揺らし、バッと顔を上げる。
つい先ほどまで考え込んでいたナルガS装備一式のハンター……影丸が、レイリンを見下ろしていた。準備していなかったために驚いたものの、真っ先に目に付いたのは、その手に掲げられているコウジンだった。心なしか、たんこぶも見える。「えェェェェェ!」と叫んでしまいそうになったが、それを何とか抑えた。

「え、ちょ、コウジン何して……」
「家から飛び出してきたと思ったら、俺の脚に激突して来た」

……申し訳ない気分になる。見ればコウジンも震えて……いやこれは、多分怖くて震えているのかもしれない。
影丸の足元にいるヒゲツの、眼光が鋭さを増す。

「……まあいい、ほれ」

差し出され、コウジンを抱きかかえると、ガシッッと凄い力でしがみつかれる。……そんなに怖いなら、喧嘩腰にならなければいいのに。

「えと、あの、それで……特に用意するなという意味は……」
「大量に色んな道具を持ってくるな、ということだ」

レイリンは意図が分からず、首をかしげる。もともと防具のせいで顔が見えにくいのに、この影丸自身が変化に富んでいるわけでないため読み取ることも出来ない。
だがその影丸は、特に説明はせず話を進める。

「狩場に向かう、最低限の回復薬、砥石……あとはペイントボールか。それくらいで良い。肉も俺が持っていく」
「え、え……?」
「……いきなり、世間一般の修行なんていうものはしない。最初にやらなけりゃならないことがある」

レイリンは、ドキリとした。喜びも、急に潜めていった気がした。
影丸はそれ以上言わず、「明日は宜しく」と相変わらず抑揚のない声音で去っていった。
ヒゲツも「旦那は言葉が少ないニャ、気にしないで欲しいニャ」とろくにフォローせず、コウジンにガンを飛ばして後ろをついていた。
残されたレイリンはというと、呆然とし立ち尽くした。腕に抱えられたコウジンが「旦那様」と呼ぶまで固まっていた。

――――― 最初に、やらなければならないこと。

その言葉が、何度も繰り返される。

「……もしかして」

レイリンは、その予想に、改めて緊張が走る。

「どうしたニャ?」
「もしかしたら……試験かも」
「しけん?」
「本当に、私を弟子に取っても良いかどうかの」

……考えてみれば、それはそうだ。いきなり狩場に一緒に行くなんてないだろうし、影丸が腕の立つハンターであろうと少なからず危険は伴う。レイリンにも周囲を察知する役目があるのだ、背後なり側面なり、任せられるかどうか……。もしかしたら、それらを判断するのではないだろうか。
と、いうことは。

浮かれている場合では、ない。

下手したら明日の試験で、影丸の引いた及第点に届かないと、即刻取り消しにだってなる。
レイリンの顔が、徐々に青くなる。

「ど、ど、どうしよう……?!」
「うぐ、だ、旦那様、落ち着くニャ……ッ」

腕に力が入ってしまったらしく、潰れたコウジンの声が聞こえた。「ごめん?!」と謝ったけれど、コウジンを解放することはなく部屋の中を意味もなく歩き回った。
ただでさえ、初対面であんな恥ずかしすぎる大失態をかましたのだ。明日それを挽回しないと、奇跡が夢に変わってしまう。
道具は特に必要ないと言ったけれど、装備と訓練所で学んだことを復習し、ベッドの中でもそればかり考えてしまった。

……ユクモ村専属のハンター。
ジンオウガの脅威を退けてきた、人。

あの影丸に弟子入りするためには、明日からが本当の戦いなのかもしれなかった。



――――― 結局、覚悟の決まらないまま、影丸と狩場へ行く時間になった。
ユクモノ装備を着込み、片手剣を持ったレイリンは、コウジンと共にユクモ村のクエスト出発地に居た。村長から「こちらのクエストですね、話は聞いていますよ」と美しい微笑みを受注書と共に向けられ受け取る。
確認しようとしたが、村長がクスクスと美しく笑みを漏らしたため、パッと顔を上げる。

「ふふ、あの影丸様が、まさかと思いましたわ。いつ以来かしら……誰かとクエストに行かれるのは」
「え?」
「初めての方には、きっと冷たく見えるかもしれませんが……どうぞ、宜しくお願いします」

何かを含んだ言葉であったが、レイリンは尋ね返すことはなかった。ただ、「こちらこそです」と頭を下げる。
村長に礼をし離れ、クエスト出発地へと向かう。その道すがら、どんなクエストかと確認してみれば、【ドスファンゴ1体の討伐】とデカデカと書かれていた。……うん、見間違い? 思わず口元をひきつらせたレイリンだが、どう見ても【ドスファンゴ】と間違えようがなく。
……これは、何かを意図しているのだろうか。過ぎる嫌な記憶に、レイリンは苦々しく眉を寄せたが、大人しく待つほかない。

うう、怖い、いやそうも言ってられないけど、怖い。

試験であれば、どうしよう。よりにもよって、あの追い掛け回されトラウマ並みに怖い思いをしたドスファンゴをどうしよう。カバンの中は本当に必要最低限のものしか入っていないのに、どうしよう。
グルグルと、嫌な結果しか巡らないレイリンを、コウジンは足元で不安そうに見上げていた。

「旦那様、大丈夫ニャ……?」
「だ、大丈夫、大丈夫だから」

不安そうにしていたら、この子まで怯えてしまう。虚勢ともいえる言葉をぎこちない笑顔で取り繕うも、コウジンはやはり不安そうであった。

「……旦那様、無理にすることないニャ。やっぱり弟子入りなんて、止めた方が良いニャ」
「! それは」

絶対に、したくない。そう続くはずの言葉だったが、近付いてくる足音に止まった。トコトコと軽い音と、ゆったりした人の足音は、静かに歩み寄ってくる。
コウジンが急に戦闘モードになったため、これは考えるまでもない。
レイリンはせめて表情だけでも引き締め、振り返る。昨晩と同じ、ナルガS装備一式の男性ハンターと、隠密色のメラルーがやはり居た。
変わらず、影丸は鋭い眼光を放つ瞳をしていたが、何処かぎこちなさを含む口調で「おはよ、宜しく」と短く言った。その足元のメラルー……ヒゲツも、行儀よくスッと礼をする。
レイリンは慌ててバッと頭を下げ「宜しくお願いします!」と返すが、足元のコウジンはそっぽを向いている。

「こ、こら、コウジン!」
「ふーん、ニャ!」

あーもー、ほら、目の前でヒゲツさんの目がピクピク揺れている。この日は、何とまああの暴君と名高いディアブロスの端材で作られたディアSネコ装備一式だ、見た目もさることながら威圧感満点。うちの子は見えていないのだろうか。コウジンをある意味では尊敬する。
出だしから嫌な気配だ、と思っていたら、影丸が肩をすくめ、目を閉じた。
今、少しだけ笑った……?
だがそれも一瞬で、レイリンが瞬きをした時には、彼は鋭い瞳をしていた。

「……ネコタクが来るな、行くぞ」
「は、はい!」

歩き出した影丸の背を追いかけようと踏み出した瞬間、足首がグギッと音を立てバランス崩す。立て直す間もなく盛大に転げたレイリンの頭上で、静かな沈黙が覆う。静かと言うより、かなりぎこちない沈黙だ。

「……一応聞くけど、大丈夫か」
「……大丈夫です」

あまりにも冷静な言葉だったため、レイリンは逆に恥ずかしくて憤死しそうだった。恐らく、転んだだけでない意味を含んでいるのだろう。
ああ、試験が始まる前からなんていう失態!
どれくらい点数が引かれていっているのか、恐ろしくて考えたくない。
のろのろと立ち上がり、出発を待つネコタクへと乗り込んだものの、乗る時にも縁を踏み外して顔面からダイブ乗りをし、出発の瞬間の大きな揺れでは後ろへゴローンと倒れる。意識すればするほど、一層酷い失敗をしてしまう。おまけに相手は、自分より何歳も年上だ。これは女として、非常に恥ずかしすぎる。

渓流に着く前に、レイリンはすでに意気消沈していた。

「……おい、お前の旦那様は今日調子でも悪いのか」
「別にあれが普段の旦那様ニャ、これくらいで驚いちゃいけないニャまだまだやるニャ」

思わぬ裏切りの言葉が、コウジンから飛び出す。ちょっと、フォローしないんかいお前! と言ってやりたくなったが、しかしそれも事実のためもはや黙るしかない。
師匠 ( になる予定の人 ) である影丸は、「そうか……」と呆れているのか怒っているのか分からない声音を返し、口を閉ざす。……渓流に到着した途端、「弟子入りなし」なんて言われたらどうしよう。レイリンの心配など知らず、ネコタクはゴトゴトと進んでいく。

ユクモ村近郊で、湧き出る自然の源泉の匂いが、徐々に遠ざかり、人の気配をも遠ざける。
悠々と佇む緑茂る大木や、晴れやかな空から、すでに人ならざる気配を感じる。この辺りはまだガーグァやケルビだけだが、この野道がさらに険しくなれば、いよいよ壮麗なる狩場《渓流》に到着する。
別の緊張が、レイリンを包む。そばに置いた片手剣へ、無意識にそっと指を伝わす。
ふと、隣を見れば、影丸は数分前と変わらず、同じ空気のままだった。それは、ドスファンゴなんて軽く越す凶悪なモンスターを討伐してきた歴戦の余裕だろうか。
レイリンが、しばし見つめていると、影丸の視線が不意にぶつかる。

「どうした」
「い、いえ!」

パッと顔を伏せるが、恐る恐る小さな声で尋ねる。

「あの、か、影丸さんは……」
「……なんだ」
「ど、どうして……急に、その、弟子入りを……」
「……思ってもなかった、か。嫌なら今からでも引き返すが」

え、やばい! 墓穴掘った?!
レイリンの、脳内失格ラインが見る見る上がっていく。ブンブンと首を振り「違います!」と返したが、影丸はまなじりを厳しくしたりはしていなかった。
それでも、変化のないことにやはりレイリンは内心ビクビクとしたが、ふと隣で行儀よく座っていたヒゲツが代わりに口を開いた。

「旦那は、少し感情表現が下手なだけニャ。気にしないでくれニャ」
「ヒゲツ」
「本当のことだ、旦那。めっきり下手くそになったニャ、良い機会ニャーそれも直せば良いニャ」

……何の話だろうか。レイリンは不思議がったけれど、ふいっと顔をそらした影丸の仕草が、妙に感情味があったように思えた。

とはいえ、試験は試験。気を引き締めなければ。
ネコタクは、目的の渓流入り口に到着しようとしている。これで合格しなければ、今後のユクモ村での生活も変わるだろう。
この人に、弟子として認められなければ……。

キュッと止まったネコタクから、影丸とヒゲツはひらりと降りる。レイリンもそれに習い、バッと飛び出したが。
着地に失敗し、顔面から落ちた。



2011.09.12