17

 心地好い微睡みに寄り添われながらも、瞼が薄く開いた。
 はゆっくりと頭を起こし、辺りを見やる。テントの中は仄暗く、閉じたテントの入口から微かな明かりが漏れている。恐らくは、まだ明け方なのだろう。
 何となしに身体を起こした、その時、の傍らでも気配が動いた。

「……目、覚めたのか」
「……ザナ? ごめん、起こし、た?」
「いや、最初から起きていた」

 ザナは牙を見せながら欠伸をこぼすと、身体を起こす。ごく自然にへ腕を伸ばし、足の間で抱きかかえると、喉を鳴らした。クウウウ、と甘えた、子どものような声。背中からすっぽりと包む温もりがあまりにも心地好くて、の瞼はとろりと下りてしまいそうになる。

「……身体」
「うん……?」
「身体、平気か」
「えッあ、うん……だいじょ……」

 大丈夫、と言おうとしたが、身体の節々の違和感と、ずっしりと圧し掛かる倦怠感を不意に意識する。昨晩の強請られるままに繰り返した獣のまぐわいが鮮やかに脳裏へ蘇り、から一瞬で微睡みが吹き飛んだ。つがいの営みではなく、正しくあれは獣の交尾であった。

「……うんと……あちこち痛い、かな」
「……それは……悪かった」

 ぽつりと呟いた低い声の、バツ悪さときたら。体格差も忘れ、力任せに組み敷き抱いた事を、一応はザナも自覚しているらしい。丸みを帯びた耳が、ぺたんと垂れ下がっている。それが可笑しくて、はふき出すように笑った。

「ふふ、いい。怒ってない。……まだ誰も、起きてない、ね」

 テントの外は、静寂に満ちている。昨晩の祝宴では、珍しく酒が大盤振る舞いだったのだ。一部のハイエナ獣人たちは、今も泥のように眠りこけている事だろう。

「もう少しで、太陽が出てくる、かな。なんだか、目が冴えちゃった」
「……なら」

 の肩に顎を乗せ、ザナが呟いた。

「少し、出てみるか? 群れの外に」





 うっすらと霧がたなびく草原には、音が無く、野生の鳥獣たちの動きもまったく見えない。陽射しが照り付け、乾いた風が吹き抜ける、過酷な環境だという事を忘れてしまう、美しい静寂に包まれていた。
 その世界を、ザナは駆け抜ける。を背負っているのに、それを感じさせない走りだった。猫背気味の身体付きからは思いもしない、意外な俊敏さ。無尽蔵の体力で荒野を何時間と駆ける、ハイエナ獣人の運動能力を垣間見た。
 まだら模様の毛皮に覆われるその背中から、はぐっと上半身を伸ばす。黒髪を泳がせながら、横切っていく風景を遠く眺める。

 ――何だか、子どもの頃のようで、楽しい。

 群れを離れ、やがて丘の上に到着する。岩場に腰を下ろし地平線を映せば、太陽が昇り、滲むような朝焼けが空を染めていった。薄い霧で包まれた静寂の世界が、一気に目覚め、鮮やかな色と光を纏う景色が、の視界に広がる。
 群れに受け入れられ、もう五年近くは経っている。見慣れているはずの荒野の国の風景が、何故だかいつもよりずっと美しく見えて――特別なものに思えてならなかった。

「綺麗だね。前からずっと知っていたはずなのに、今日は、うんと綺麗」
「……そうか」
「あのね、ザナ」

 朝陽を浴びるハイエナを、は真っ直ぐと見つめた。

「私、もしもの話は、もう、しない。これからの事、たくさん、考える」

 もしもハイエナであったなら。
 もしも人間の町で、西の国で暮らしていたなら。
 そんな事をとりとめなく考えるのは、もうこれっきりだ。これから先は、乾いた大地を踏みしめ、荒野の国と獣たちの掟に習い生きていかなくては。

「ザナと、一緒に、ずっと」
「……言われなくても、放り出す気はねえよ。ずっと」

 後ろから包み込む毛むくじゃらの腕が、温もりが、くすぐったくて心地好い。
 ここからようやく、私たちは“始まる”のだ――そんな希望を抱かずにいられない、特別な瞬間を、は胸の深くに刻み付けた。

「……欲しいものがあれば、なんでも、いつでも言え。俺の牙と爪は、もうお前にやったんだからな」
「欲しいもの、かあ……」

 は、ふと、考えてみた。つがい、つまりは夫婦になったが、夫婦よりも恋人たちがするような事をしてみたいし、今日のように二人だけで過ごす時間も欲しい。そういった願望は、これでもたくさん有り、考え始めるとキリが無くなってしまうが……――。

「……あ、それなら」
「うん? なんだ」
「欲しいもの、というか、したい事、かな。さっそく、思い付いた」
「へえ。何だ、言ってみろ。獲物か? 大抵のもんは獲れると思うぞ」

 さすがは狩人。頼もしい限りだ。しかし残念ながら、今回はそれではない。
 は悪戯っぽく含み笑いを浮かべると、ザナを手招きし、内緒話をするようにハイエナの耳に顔を寄せる。こそこそと打ち明けると、次第に上機嫌だったザナの顔が渋い表情を作り始めた。

「……おい、本気かよ」
「なんでも言えって、言ったじゃない。ついさっき」
「いや、そうだけどよ……だからって……」

 若干、嫌そうな気配すら滲んでいた。まあ、ザナの性格を考えれば、その顔をするのも分からなくないが……。
 は、期待を込めた眼差しを、じっと向ける。ザナは口を閉ざし、しばらくは無言の問答が続いていたが――結局、折れるのはザナだった。
 唸るように吠えると、まいったと言わんばかりに空を仰ぐ。

「~~~わかったよ、んな顔すんな! やってやるから」
「本当?」
「ああ……」
「良かった、嬉しい!」

 しかし、心を躍らせてはしゃぐとは正反対に、ザナはあまり気乗りした様子ではない。それどころか、了承はしたものの、抵抗の意思がありありと見えた。

「お前……絶対に後悔するからな……知らねえぞ……」
「なにそれ。しないよ、もう。姉さんやみんなに、相談しないと、ね」

 ハイエナ獣人たちにとっては“初めて”の事だろうから、戸惑うかもしれないが――あれで楽しい事好きの、ノリのいい仲間たちだ。案外、快諾してくれるだろう。

「ふふ、楽しみだね、ザナ」
「……お前が楽しみなら、もう、何だっていい」

 何処か諦めたように、ザナは溜め息を吐き出している。はそんな彼にくるりと向き合うと、まだら模様が散らばる黄褐色の毛皮に頬を寄せ、鍛えられた硬い身体を抱きしめる。

「ありがとう、ザナ。大好き、よ」

 ザナは、何も言わない。けれど、その喉から聞こえてくる甘えた鳴き声は、なによりも心情を表していた。
 ザナの腕が、の背を力強く抱く。優美さとは縁遠い、力任せな抱擁。乾いた土と、緑の香りがした。それがこの時はとても嬉しくて、は泣き笑いのように頬を綻ばせる。互いの鼻先をくっつけ、少し見つめ合った後――二人揃って、吹き出すように声を上げ笑った。


◆◇◆


「――エリオス様、お手紙が届きましたよ」

 執務机に向かっていたエリオスの前に、壮齢の執事が銀色のトレイを差し出した。そこに載せられていたのは、一通の簡素な手紙だった。紙の質はさして良くはないが、西の国で使われるものとは作りも異なり、何処か異国の風情が香っている。砂と土、そして照り付ける太陽が浮かぶような、無骨な質感と見た目を有している。
 宛先を見ずとも、何処から届いたのか、うっすらと分かった。エリオスはペンを一度置き、手紙を手に取り広げる。その手紙は想像の通り、遥か遠い荒野の国から届いたものだった。

 ――こんにちは、エリオス。貴方が帰ってからそんなに時間は経っていないはずなのに、何だかとても懐かしいね。

 綴られていた文字は、こう言っては失礼だが、意外にもとても綺麗な形をしていた。書き手であろう彼女は、幼い頃働いていたと教えてくれた。きっとそこで文字を覚え、培ったのだろう。

 滞在した日数は、一週間程度。長いような、短いようなその時間は、エリオスにとって目まぐるしく、また未知の体験ばかりで、どの国よりも思い出深い。灼熱の空気、目眩がする陽射し、金色の草原に様々な種族――初めて目にした荒野の国は、今も驚くほどの鮮やかさで目の前に浮かんだ。
 きっとそれは、彼女の存在があったからだろう。
 ハイエナ獣人の群れで、ただ一人の人間。“花”と呼ばれ愛しまれた、小柄ながら生命力に溢れた美しい娘――
 褐色の肌と、二つに括った長い黒髪、そして乾いた世界の中では鮮烈な印象をもたらす鮮やかな青い瞳を持った彼女は、エリオスが滞在していた間とても良くしてくれた。淡く柔らかい恋心を、抱くほどに。
 彼女が荒野の国を離れないだろう事は知っていたのに、共に西へ来ないかと、誘わずにいられなかった。もちろん、断られた。そんな事は分かり切った事だったのに、帰郷の旅路では傷心のあまりしばらく落ち込んだ。
 今はもうさすがに懸想する事はなく、旅の思い出として折り合いをつけているが、西の国へ戻った今も時々思い出していた。故郷とは異なる、厳しく過酷な環境と多種多様な獣人たちが生み出す、あの自然に溢れた力強く美しい風景を。仲間に囲まれて笑う、青い瞳の“花”の横顔を。

 手紙には、飾りっ気のない、ありのままの純朴な言葉が綴られていた。荒野の国の変わらない暑さ、群れの仲間たちとの賑やかな日常。そして――とザナが、長に認められつがいになったという事も。

「……そうか、良かった」

 それは、エリオスの、心からの言葉であった。
 獣人と人間が結ばれ夫婦となる事は、西の国でも耳にする。しかし、実際はそれほど多い事ではない。西の国もそうなのだから、荒野の国とて恐らくは同じだろう。もしかしたら、もっと前例が無いかもしれない。様々な種族が独自的な掟のもとで暮らしている、あの国の成り立ちを思うと……とザナの結びつきは、実はとてつもなく大きな出来事ではないだろうか。まして、あのハイエナだ。姿形は小柄とは言え、骨の髄まで食らい尽くす特異な風習により、その存在感は広大な荒野でも非常に大きいものとなっている。卑怯者だとか狡猾だとか、様々な呼称がついた彼らも、紛う事なく恐ろしい獣なのだ。エリオスはそれを見せつけられ、理解すると同時に僅かな恐怖を抱いた。
 しかし、は、恐れる事なく受け入れた。大切な家族であり仲間だと、清々しく言い放った。それがどれほどの事であるのか、彼女はもしかしたら気付いていないのかもしれない。

「……いや、いいんだ。それでこそ、さんだ」

 手紙は終盤へと差し掛かり、最後の締めくくりの言葉がエリオスの目にそっと映った。

 ――またいつか、荒野の国で会いたい。今度はもっとたくさん案内してあげるね。私とザナで。

 きっと、本心でそう願ってくれているのだろう。裏表のない、純朴な優しい文字に、エリオスは笑みをこぼした。
 そして、封筒の中にあったのは、この手紙だけではなかった。
 折りたたまれ封入されていた紙を広げてみると、飛び込んできたのは文字ではなく――絵だった。
 素朴な筆遣いと、澄み渡るような美しい水彩。あの賑やかな町の絵描きに描いてもらったのだろうか。大きなキャンバスに描いたわけではないが、その素朴な清純さに目を奪われ、どうしようもなく頬が緩んでしまう。

 恥ずかしがっていたが、この絵の中の彼女は、間違いなく“荒野の花”だ。

「――まったく、やっぱり貴方が羨ましいな。ザナさん」

 必ず、また、あの国へ行こう。そして、また身体のあちこちを痛め、肌を焼きながら、彼らに引っ張られるのだ。
 貴族の子息ではなく、ただの旅人として。

 エリオスはすぐさま執事を呼び、額縁を用意するよう伝えた。この絵が褪せないよう、あの旅をいつでも思い出せるよう、一等席に飾らなくては。
 いつかまた会う時には、とびきりの手土産と祝福を贈ろう――エリオスは爽やかな笑顔を咲かせた。


◆◇◆


「わああ! 、とっても綺麗だよ!」
「おねえちゃん、きれい!」

 群れの仲間たちから向けられる、たくさんの賛美と微笑み。は気恥ずかしさを感じながらも、柔らかくはにかんだ。

 この日は、色鮮やかなケープと、簡素な麻のワンピースという、普段の恰好ではない。
 荒野の国では珍しく、また特別な意味を持つ、白い色彩を纏っていた。

 純粋な澄んだ白ではなく、陽の光が溶け込んだような淡い白で、眩しさの中にも親しみを感じさせる色合いだった。肌の露出は少ない薄手の衣で、首元を隠し足首を覆うが、身体の輪郭を描くようにぴったりと吸い付く。全力疾走の出来ない作りをしており、普段では絶対に着ない煌びやかな衣装だが……けして、着心地は悪くない。なんだか砂漠のお姫様になったような、少し誇らしい、華やかな気分だ。

 荒野の国の情緒に溢れたその白い衣装は――人間の、婚姻の装束だった。

「でも、あんまり綺麗で、ちょっと、気後れする。変じゃない、かな」
「何処がだ!! とても似合うぞ!! 黒髪と焼けた肌に白がよく映えるな!!」
「姉さん、声でか」

 そしてやはり一等上機嫌なのは、群れの長であり、の姉である、ジルダだった。もう見ていて恥ずかしくなるくらいに、ルンルンに浮かれている。

「さ、花冠だ。出来るだけ明るい花を選んだ。少し不格好かもしれないが」
「そんな事ないよ。ありがとう」

 荒野の国の、色鮮やかな花を編み込んだ冠。それをジルダの大きな手が、の頭へそっと乗せる。

「人間がつがいになった時の儀式、か。私達にはまったくない文化だが、良いものだな」

 男女共に特別な装いを身に纏い、婚姻を誓う――人間という種族特有の習わしは、獣人には無論縁のない習わしである。
 一度でいいから、そんな特別な装いに身を包んでみたかった。何処か遠くに置いてきた少女じみた願いだったが、群れの仲間は皆、を嗤う事なくむしろ「いいねやろうぜ!」と一斉に意気込み、勢いよく食いついた。まったく、なんてノリのいい仲間たちなのか。その上、まさかたった数日でそれが叶うとは、思いもしなかった。

「うむ、さすが私の、私達の自慢の“花”だ。とても……よく似合う」

 呟いたジルダの表情は、群れ最強の女傑ではなく、優しい姉あるいは母そのものだった。

「姉さんが居てくれたおかげ、だね。本当に、ありがとう」

「ザナと一緒に、これからもここで暮らしてく。ハイエナのつがいとして、ずっと」

 ジルダの肩が、ふるふると小刻みに震え出す。ハイエナの顔がくしゃくしゃに歪み、太い腕が広がった。感極まったようにを抱きしめようとしてきたが、それはすかさず周囲の仲間が数人がかりで止めに掛かった。

「長を止めろ! ひっついたら三時間離れないぞ!」
「町から借りた衣装がぐしゃぐしゃになる! 絶対に近付けないで!」
「ええええい、離せ! 離さんかお前たち! ~~~うぇぇぇぇん!!」

 いつかの宴、再来。群れ最強の女傑は、周囲の目も憚らず太い声で大号泣している。
 さてそれは良いとして、もう一人の主役はどうしたものか――。
 が視線を巡らしていると、仲間たちに引きずられるような形で、ようやくザナが目の前に現れた。

 彼もまた、と同じ陽が溶け込んだ柔らかな白で染められた布を纏っていた。普段から衣服というより布を腰に巻く程度の身なりのため、それが白い色に変わっただけではあるが、それでも普段にない色彩のおかげで特別感が溢れている。もともとの毛皮が暗い褐色だから、白色がとても眩しく、想像以上によく似合う。
 普段は賊のようだと言われるハイエナ獣人の風貌だが、たまにはそんな装いも良い。

「わああ……ザナ、似合うよ。素敵」

 は両手を口に押し当て、感激の溜め息をこぼしたが――ザナはというと、捨て鉢になった若干の自棄を、全身から滲み出している。

「……そうかよ、お世辞をありがとうよ」

 低い声は抑揚がなく、諦めきった風情に溢れていた。狩りに失敗した時ですら、そのような有様にはならなかったというのに。

「……早くも後悔してきた……なあ、やっぱりすぐに脱いだ方が良いんじゃねえか?」
「むッ! やってくれるって、前に言ったじゃない」
「そりゃそうだが……俺らには山賊の服の方が似合うだろ」

 よほど居心地が悪いのか、自ら山賊と言ってしまっている。

「姉さん、絵を描かせるってはりきってたから、しばらくは脱げないよ。町から得意な人、呼んで来るって言ってた」
「嘘だろジルダ……絵に残してどうすんだよ……!」
「エリオスへのお手紙に、入れれば良いんじゃない?」

 西の国へ帰って行ったエリオス。出立の日、彼は手紙の届け先をへ教えてくれていた。丁度いいからそれに忍ばせようと思っていたのだ。

「……大体、俺じゃなくて、お前だけ着飾ればそれで良いと思うんだがな。荒野の嫌われ者には、少し、綺麗過ぎる」
「もう……ほら、ザナ!」

 はザナの正面に立つと、花冠を持ち上げる。それを、素早くザナの頭へ乗せた。

「おい、何すんだ」
「ほら。嫌われ者だって、花は似合う、よ」

 しょぼくれていた顔が、今度は驚いて呆けている。はそれを笑い飛ばし、毛むくじゃらの大きな手を取った。

「嫌われ者なんて言われる、貴方のおかげで、私はここにいる。ねえ、ザナ……“あの日”と同じ言葉を、今も私は、かけてもらえるかな」

 ザナは、小さく呼気をこぼす。そうして浮かべた表情は、いつもの調子が戻った不敵な笑みで彩られていた。

「ふん、そんなの――言うまでもねえだろ」

 言い放つや、ザナは身体を屈め、の膝の裏へ片腕を回す。そのまま軽々と抱き上げ、歓声を高らかに響かせるハイエナたちへと、白く彩られたを見せつけた。
 粗野で、乱暴で、ぶっきらぼうで……何だか戦利品になった気分でもある。婚姻の儀式とは、このようなものだったのだろうか。
 思い浮かべていたものとは若干違うが、きっとこれが、この群れには相応しい。何処までも賑やかな空気の中、はにんまり顔で、がしりとザナの頭を掴む。


 ――これもいつか、笑い話になるんだろうな。
 西の国の殿方に誘われても、嫌われ者のハイエナに恋して離れなかった痩せっぽちの花がいた、と。


 短いたてがみが生え揃う頭の天辺へ、思いきり口付けを落とせば、ザナは素っ頓狂な顔をする。あの日の小さな子ハイエナを思い出しながら、はとびきり華やかな笑顔を咲かせてみせた。



ずいぶんとお時間をいただいてしまってすみませんでした。
が、無事にこれにて本編は完結となります。
これまで更新を追って下さっていた方、待っていて下さった方、うっかり立ち寄って人外沼に滑り落ちてしまった方などなど……お付き合いいただきまして、ありがとうございました!

◆◇◆

オオカミやトラ、ライオンといった名だたる有名動物ではなく、ドマイナーなハイエナをモチーフとしました今回の読み物。
彼らの極めて完成された社会性、腕利きの狩人ぶり、仲間に対する献身ぶり……調べれば調べるほど、素敵な生き物でした。
とはいえ多くのイメージが【狡猾】【性格悪そう】【掃除屋】などの不名誉なものばかり。少しは、そのイメージを変えるきっかけになれば、嬉しいです。
そして、ザナとが、これからも読んで下さった方々の心の本棚にありますように。

そんでもってあわよくば――人外モノの良さが、広がりますように!!!!(血眼)

◆◇◆

あと、本編で書く事が出来ませんでしたが……ハイエナには超すごい属性がありまして

メスはみんな、ふたなり

ありがとうございました!


2021.09.04